「もん」ちがい。紋と文。

2020年05月18日

文 もん

前回ざっくりとご説明したように、二次元の絵を三次元の織物に昇華させる 設計図 兼 指揮官としての紋(もん)があるだけでなく、西陣織の世界にはもう一つ大切にされてきた、文(もん)がある。

その文(もん)とは、西陣織の世界だけでなく、人の文化に脈々と受け継がれてきた祈りの形ともいえる。

わかりやすい例でいうと、神社などで授与されるお守りの錦に織り込まれた絵柄など。

健康成就の南天柄は、難(なん)を転(てん)ずるという意味や、南天の薬効成分にあやかったもの。

こども守りには麻の葉柄。六角形の幾何学文様は魔除けの意味を持ち、成長の早い麻の葉にあやかって、こどもの健やかな成長へ祈りをこめたものなどなど。

つい先日も、某政治家の方が、魔除けの意味をもつアイヌ文様の刺繍をほどこされたマスクをつけておられ、大変話題になった。

このように、KIMONO文化だけでなく、入れ墨なども同様にして、森羅万象の意匠を縫い込んだり染めつけたり織り込んだりすることで、人智をこえた力を呼び込み、厄災から身を守る祈りの形を身にまとうものにほどこしてきた。

西陣織の帯に関しても、例にもれず、吉祥文様・厄除け文様を筆頭に、様々な文様を帯に織り込んで大切に継承されてきた。

願いや祈りをこめたお守りとしての文様(もんよう)。その概念を変わらず大切にし、祈りの形を現代の要素に置き換えて、その帯を締める人、その織物を手に持つ人の幸福を願いながら、これからも織物づくりに携わっていきたい。